古道具熊川

群馬県は下仁田。

毎週日曜日、レンガ作りの倉庫の厚い鉄扉が開かれる。
仄暗い静謐な空間。
箪笥、椀、燭台、茶壺、木臼、籠、箱、棚。
審美の通った骨董品が並ぶ中、目を奪われるのは無用の品々。
三角の木っ端、
錆びた金網、
朽ちかけた板。
作り手の作為も、道具としての用途すらも忘れられたオブジェクトから、
降り積もった時間だけが、鈍い光を放っている。
無用であればこそ、その美は一途だ。

音楽家の友人が、店主に許しを得て小型のサクソフォンを吹いた。
バッハの旋律は易々と時空を超える。
最後の音が染み入るように消えたあと、
ここでの撮影を願い出た。
思えば不躾なことだったが、よく知る友人に請うように求め、
(きっと)店主もそのように頷いてくれた。

店内ばかりでなく、時の流れに取り残されたような下仁田の諸相を見つけ、
案内役を引きうけてくれた”古道具熊川”代表、
西原さんのご尽力と友情に感謝するとともに、
多くの人にこの店を訪れてほしいと願います。

古道具 熊川

群馬県甘楽郡下仁田町下仁田430-1
営業時間 日曜日 12:00-18:00
※営業日は要確認

Photograph by Shuhei Tonami